加入者までの回線に関係する問題

@距離の問題

距離が遠いためリンク速度が低く、減衰量(損失)が大きい。
電話と違い高周波信号を伝送しますので、長い距離になれば減衰量(損失)が大きくなり、高い周波数帯域の部分が使用できにくくなります。この距離は収容局と加入者宅の直線距離ではなく、あくまでも電話線が引き回されている距離になります。途中に川や鉄道線路等がある場合はかなり迂回しているようですので注意してください。
また使用されている電話線の導体部分の太さも関係します。

NTTでは電話回線の線路情報の公開を始めました。電話番号を入力することで収容局からの距離(計算値)、伝送損失(計算値)を知ることができます。詳しくは こちら(NTT東日本) をご覧下さい。
解決方法
ありません。強いて言えば収容局の近くに引っ越すことですが現実的ではありません。
この状況では、ISDNより低い速度であればISDNに切り替えるか、ISDNの数倍以上速いならば諦めて使用し続け、CATVやFTTHのサービス地域になるのをひたすら待つことになります。ただ、マンションのような集合住宅の場合、個人の一存でCAVTやFTTHを引き込むことは困難です。
Yahoo!BBではReachDSLサービスをはじめました。これは従来の8Mサービスでは著しく低速なユーザへの救済措置という位置付けですが、理論値では9km以上、最大960kbpsというスペックです。平均して500〜600kbps程度は出るとの話もありますので、距離に泣いているユーザには朗報です。詳しくは こちら をご覧下さい。
また、各回線事業者とも12Mサービスの提供に伴い、提供可能距離も伸びています。1.5Mや8Mで断られた場合でも12Mサービスが利用できる可能性があります。

A配線法の問題(ブリッジタップ)

距離の割に減衰量(損失)が大きい。
電柱から各戸へ電話線を引き込みますが、使用できる電話心線の自由度を上げるために、電柱間で余分な配線をしている場合があります。ブリッジタップの有無はNTTまたは使用している事業者に問い合わせてみます。

ブリッジタップとは、例えば下図で
の線は別な電柱まで余分な配線が存在します。端子函Bから電話線を引き込んでいた住宅Bが転居して端子函Bのの線は使用されなくなったとします。その後端子函Cの近くの住宅Cで電話の需要が発生したとします。端子函Cのの線はすでに使用済みのとき、端子函Bから配線されているの線を使って住宅Cに電話を引き込むことができます。
このような配線法は電話線の加入者宅への引き込みに関して柔軟に対応でき、通話には影響が出ない配線法ですが、ADSLでは余分な配線の部分が減衰量(損失)の増大につながり悪影響を及ぼします。
解決方法
有料になりますが、NTTに回線調整(ブリッジタップはずし)を依頼します。
ブリッジタップをはずしても改善しない場合もありますのでご注意ください。


BISDN干渉の問題

距離もブリッジタップの問題もなさそうだが速度が出ない。
日本は世界に冠たるISDN先進国ですが、使用する方式(ピンポン伝送方式)は米国などのもの(エコーキャンセラ方式)とは違っています。ピンポン伝送方式はISDNを実現する方法としては優れた方式ですが、エコーキャンセラ方式の4倍程の周波数帯域を使用(0〜320kHz)します。また320kHz以上にも高調波が発生し、ADSLの使用する周波数帯域と重複する上出力が大きいため、ADSLに与える影響が大きくADSL側からすると不倶戴天の敵となってしまうのです。


ADSLの規格〔G.dmt(8M)、G.lite(1.5M)〕には、日本におけるISDNの方式の影響を受けにくくしたAnnex Cというものがあります。米国方式のAnnex Aも日本国内で使用されていますが、Annex Cの方がよいと思います。詳しくは こちら をご覧ください。

ADSLがISDNからの影響を受ける度合いはケーブルの位置関係により違ってきます。市内配線ケーブル:CCP(Color Coded Polyethylene)ケーブルは下図のような構成になっています。
電気信号は往復する2本の導線を1対(ペア)としたケーブル上を伝送されます。ケーブルは撚り合せることで周囲から雑音を拾いにくくするよう工夫されています。対を成す2本の導線単位で撚り合せるのが理想ですが、日本ではまとめたときの太さが細くなるよう、2対4本の導線単位で撚り合せた星形カッドが採用されています。星型カッドを集めてサブユニット、サブユニットを集めてユニットを構成しており、太い市内ケーブルでは400対のものまであります。
同一カッドの他の対がISDNであった場合最も大きな影響を受けますが、隣接カッド、一つ飛びカッドのISDNからも影響を受けてしまいます。
ADSLモデムの”ビットマップ”または”キャリアチャート”と呼ばれるものを見ると、その影響の度合いがわかります。これはどのモデムでも見られるものではありませんが、参考までに 私の環境でのビットマップ をご覧ください。

解決方法
有料になりますが、NTTに回線調整(回線収容替え)を依頼します。すなわち、近くにISDN回線がない別のカッドに変更してもらうわけです。ISDN干渉のみが原因ならこれで改善する可能性が高いでしょう。
ただし、ある日突然速度が低下したような場合、同一カッドの他の対がISDNに切り替わったことによる影響の可能性があります。このような場合は後行回線(後に工事を行った)側で対処すべきですから強く主張すべきでしょう。
回線収容替えでも状況が改善しない場合もありますのでご注意ください。


CAMラジオ電波等の干渉問題

前述のADSLが使用する周波数帯域と無線局が出す電波の周波数帯域が重複する場合があります。無線局の代表格はAMラジオ放送局や無線標識局です。日本で聞くことができるAMラジオ放送で使用する電波の周波数は531kHz〜1602kHz、また無線標識局では100kHz〜400kHzを使用しています。各無線局の空中線出力にもよりますが、近隣にこれら無線局がある場合、電話線がこれらの電波を拾い該当する周波数帯域をADSLが利用できない場合があり得ます。不適切な屋内配線により、より大きな影響を受ける場合もあります。
ADSLモデムの”ビットマップ”または”キャリアチャート”と呼ばれるものを見ると、その影響の度合いがわかります。これはどのモデムでも見られるものではありませんが、参考までに 私の環境でのビットマップ をご覧ください。
解決方法
宅内での対策になりますが、宅内配線は極力短くしAM波用のノイズフィルターを設置します。
事業者によってはADSLモデムのファームウェアの更新によって対処しているところもあります。
これらの対処でも状況が改善しない場合もありますのでご注意ください。
特に強電波界では難しいでしょう。


D保安器の問題

電話が着信するとADSLのリンクが切れてしまう。リンク切れとは、ADSLモデムの”LINE LINK”ランプが今まで点灯していたのに、突然消えてその後点滅状態を経て再度点灯するような状態です。
保安器の機種(型番:6PT)ではこの原因になるものがあるようです。
解決方法
NTTに問い合わせをしてみて、該当する場合は有償で保安器を交換してもらえます。


総括

複数の要因が絡んで速度が上がらないことが多いようです。ここに挙げたのは主に自分ではできない対処になりますので、まずは後述の自分でできる対処をしてみてください。