企業でのIP電話導入 (2007年4月改訂)

事業所や店舗などの複数拠点を持ち、これらの拠点間の通信料金が大きな比重を占める企業にとって、IP電話は救世主です。これら拠点間で、同一のVoIP基盤のIP電話事業者と契約することで、拠点間通信はいわば”内線”となり、通話料が無料になります。このような企業では、IP電話の導入を積極的に検討すべきです。

一方、複数拠点間の通信がないような企業の場合は判断が”微妙”です。この場合、通話料がゼロになる部分はほとんどありません。しかし、長距離の通話が多い場合には”全国一律料金”がモノをいいます。北海道から沖縄に電話しても、3分8円強になるわけです。

2006年度末でNTT東日本のBフレッツ契約数が340万件を突破し、0AB〜J番号のIP電話である「ひかり電話」の利用も着実に増加しています。「ひかり電話」には、住宅用の「ひかり電話」の他に、「ひかり電話オフィスタイプ」、「ひかり電話ビジネスタイプ」もラインナップされ、ビジネス用途でのIP電話も選択の幅が広がりました。住宅用はともかく、ビジネス利用で050から始まる番号に切り替えるのには大きな抵抗があります。

ここでは、5、6本程度以下の電話回線を使用しているような、SOHOや小規模な企業でのIP電話導入について考察してみましょう。
このような用途の複数チャネル利用可能なIP電話サービスが各社から提供され始めています。
下図のように使用する電話回線の削減とIP電話による通話料金の削減が可能になります。
既存のビジネスホンやビジネスホン主装置/PBXをそのまま活かして複数回線(チャネル)のIP電話が導入できます。
このような法人向けIP電話サービスを提供しているのは次のようなところです。
いずれもVoIP基盤網の提供元です。
これらの中には、さらに大規模な企業向けのIPセントレックスサービスを行っているところもあります。
NTT東日本の「ひかり電話オフィスタイプ」は、SOHO、小企業向けのサービスです。
Bフレッツ・ハイパーファミリータイプの利用が前提ですが、従来の電話番号(0AB〜J番号)がそのまま引き継げ、1契約で最大8回線分・32番号の利用が可能になります。ひかり電話オフィスタイプ対応アダプタを使用することによって、既存のビジネスホンシステムをそのまま流用することも可能で、従来に比べ、導入の敷居はかなり低くなりました。
050からのIP電話の場合、同一VoIP基盤網の相手との通話では通話料金が無料になりますが、ひかり電話の場合、加入電話、ISDNの場合に加えて、ひかり電話への通話の場合も、全国一律8.4円/3分の通話料金となり、ひかり電話同士の通話でも通話料金がかかる点に注意が必要です。
提 供 会 社 サ ー ビ ス 名
NTT東日本 ひかり電話オフィスタイプ
ひかり電話ビジネスタイプ
NTT-ME XePhionコールPro
NTTコミュニケーションズ OCN .Phone Office
フュージョン FUSION IP-Phone法人向け
フォーバル FTフォン
ただし、利用する上でいくつか留意すべき事項もありますので注意が必要です。
ADSLを利用する場合 (光ファイバのみのサービスもあり)
特にADSLでIP電話サービスを利用する場合は、リンク速度、実効速度に注意が必要です。1チャネルあたり最低100kbpsの実効速度が推奨されていますので、実効速度の出ない環境では複数チャネルの利用ができない場合もあり得ます。
また、PCによるインターネットアクセスとの共用は極力避けるべきです。インターネットで大容量のファイルをダウンロードしているときには、通話が困難になる場合もあり得ます。
加入電話回線を削減する場合
代表番号を利用している場合、加入電話とIP電話とでの代表組みはできないので、相手から代表電話番号への着信による通話(加入電話)は、同時に何通話まで可能にするか決め、その上で削減する回線数を決める必要があります。
こちらからの発信にはIP電話を優先して使用するよう、ビジネスホン主装置/PBXの設定を行います。
加入電話回線を削減しない場合
ビジネスホン主装置/PBXに空きの外線トランクがない場合は、外線ユニットを追加しなければなりません。機種によっては追加できない場合もあります。
FAXに関する注意
FAX通信の保証はされていません。各社ともFAXは加入電話網で接続するよう推奨しています。
とはいっても、今までの経験上は、深刻な状況に出会ったことはありません。

料金の比較

A→B IP電話なら無料
A→B 加入電話経由なら距離・時間に応じた課金

A→C IP電話なら距離にかかわらず8円/3分程度
A→C 加入電話経由なら距離・時間に応じた課金

A←C IP電話番号へであれば、距離にかかわらず10.4〜10.8円/3分 (C→B、C→Dも同じ)
A←C 加入電話経由なら距離・時間に応じた課金

A→D 有料相互接続提携の他VoIP基盤網の場合8円/3分
A→D その他の場合、加入電話経由となるが距離にかかわらず10.4〜10.8円/3分

A→E 加入電話経由なら10円/26秒 (ドコモ 8時〜23時)
A→E IP電話なら20円前後/1分
本社−支社間での通話が多いならば、IP電話導入で通話料金は無料となります。(ただし、月額の基本料金は必要)

長距離の通話が多いならば、IP電話導入で距離にかかわらず8円/3分程度となり、通話料金が削減できます。

携帯電話への通話は微妙です。原則的にはIP電話でかけた方が安くなりますが、携帯キャリアとVoIP基盤網の組合せや時間帯によっては、加入電話からの方が安くなる場合もありますし、ほとんど変わらない場合もあります。

料金表はこちらを参照してください。