IP電話
日本における一般加入電話の歴史は1890年(明治23年)に始まりました。その後加入者数は、1910年(明治43年)には10万、1939年(昭和14年)には100万、1968年(昭和43年)には1000万、1989年(平成元年)には5000万、1998年(平成10年)には6285万でピークに達しました。
2006年(平成18年)12月では5114万となっています。(ISDN含む) この8年で1000万回線も減少したのは、携帯電話の普及によるものです。
携帯電話・PHSの加入者数は1989年(平成元年)に50万に満たなかったものが、1998年(平成10年)には4730万に、2006年(平成18年)12月では9983万に達しています。
21世紀になり電話の分野にも大きな変革の波が打ち寄せています。それがインターネットをベースとするIP電話です。IPとはインターネットで使われている通信規約 Internet Protocol を意味します。
日本におけるインターネット利用者は、1997年(平成9年)に1155万人だったものが、2002年(平成14年)には6942万人になっています。インターネット接続サービスのうち、ブロードバンド契約の内訳ですが、2006年(平成18年)12月末時点で、DSLサービスが約1424万、FTTHサービスが794万、CATV網が357万となっています。
常時接続可能なブロードバンド接続の合計(DSL+FTTH+CATV)が2576万となり、このような基盤の充実がIP電話サービスの基になっています。
(参考)
デジタル網で音声を通すためにはある一定以上の速度を必要とします。ISDN(サービス統合デジタル網)では通話用の1チャンネルが64kbpsです。(原理割愛)
IP電話ではパケットヘッダなどの制御データも付加されますので、最低でも実効速度で100kbps程度以上、リンク速度で300kbps程度以上の通信環境が推奨となっています。ですから、常時接続でなく、64kbpsより遙かに遅いダイヤルアップ接続ではIP電話の利用ができません。
IP電話と聞けば「割安な通話料」と思い浮かぶでしょう。なぜ安いのかといえば、高価な交換機を初めとする専用のシステムを必要とせず、PCを基本としたサーバで構成されるインターネットを利用するからです。電話交換機・中継交換機の維持・更新には莫大な費用がかかりますが、PCサーバはずっと安価です。基本的には無料のネットワークであるインターネットを音声通話にも利用しようとするわけですから、料金的に既存の電話交換網は太刀打ちできません。
しかし、通信品質・信頼性という面では電話交換網に分があります。
また、安い通話料金に目が行ってしまいがちですが、インターネット(ブロードバンド)を利用するための月額費用が別途かかることを忘れてはいけません。接続サービス料金やプロバイダ料金、機器レンタル料金などが必要ですので、IP電話利用を主目的にすると、加入電話に比べ安いとはいえなくなってしまう状況もあります。
万人が諸手を挙げて飛びつけるサービスではないことも事実です。
しかし、電話利用頻度が高く、インターネット利用が当たり前となってきたビジネス分野において、IP電話の導入による通信コストの削減は充分実現可能なものと思われます。IP電話サービスも個人向けから小規模企業向け、大規模企業向けといろいろなバリエーションが出てきました。ご自分の環境をよく検討して、安価で最適な通信環境を作りましょう。
IP電話サービスを取り巻く環境は大変複雑です。「無料通話」という言葉が先行していますが、これも「条件付で」という部分がぼかされています。
この条件を把握するためにはVoIP(Voice over IP)基盤網事業者、回線事業者、プロバイダの複雑な関係を押さえる必要があります。
これら全てを網羅することはできませんので、大手に絞ってまとめてみます。
通信事業者の合従連衡がだいぶ進み、IP電話サービス開始当初に比べるとかなりすっきりしてはきましたが、まだまだ複雑な点が多いのが実情です。上図からわかることは、同じプロバイダに加入しているからといって、IP電話で無料通話が必ずできるわけではないということです。@niftyやBIGLOBE、SANNETでは、同じプロバイダに加入していても利用するVoIP基盤網が異なるIP電話サービス利用者同士は、無料通話ではなく提携有料通話料金(3分8円)でかけることになってしまいますので注意が必要です。
050から始まる電話番号でも、相手のVoIP基盤網を確認してからかけるなど非現実的な話ですが、050に続く4桁で利用する事業者を総務省のサイトで調べることはできます。
VoIP基盤網がどうのこうのは利用者にはよくわからない部分で、IP電話同士ならば無料か加入電話にかけるより安くかけられるようにすべきです。
各VoIP基盤網事業者毎の通話料金の概要を調べてみました。詳細は利用するプロバイダの料金表を確認してください。これ以外に月額基本料金がかかる場合もあります。
また、平成19年からユニバーサルサービス料として、1番号につき月額7円徴収されることになりました。
参考資料1
同一県内の加入電話通話料金(NTTコミュニケーションズ、日本テレコムも同額)
参考資料2
県外への加入電話通話料金
参考資料3
加入電話から携帯電話への通話料金
個人利用時の宅内構成(配線・配置)
IP電話の仕組みはまた別の機会に取り上げることにしますが、ここではIP電話の利用形態についてまとめてみます。
2003年10月23日から固定電話(加入電話)からIP電話への着信が可能になったため、今まではIP電話で発信する側のコスト面での有利さだけだったものが、IP電話に向けて発信する側にもコスト削減の効果が出てくるわけで、IP電話普及に向けての必要十分条件がほぼ揃ったのではないでしょうか。あとは携帯電話への低料金発信が早期に実現し、VoIP基盤網が異なるIP電話同士の低料金通話が実現するのを期待しましょう。
以下はあくまで私の利用環境における構成可能な例ですので、ISPやIP電話事業者によっては適用できないこともありますので、その点をご承知おきください。
現在の運用は 3 で行っています。
私の環境
プロバイダ : ASAHIネット(IP電話F)
回線事業者 : NTT東日本(フレッツ・ADSL モア)
VoIP基盤網事業者 : NTT-ME
使用機器 : ADSLモデム−NV
1.最も一般的な構成
電話機は1台だけ使用します。モデム−NVがダイヤル内容によりIP電話/加入電話を切り替えます。
緊急ダイヤル(110,118,119等)や携帯電話番号の場合は加入電話で発信されます。また、一般の電話番号でも最初に「0000」を付加すれば加入電話経由になります。
着信はリンガ音でIP電話/加入電話が区別できます。
当然のことながら、IP電話で通話中に加入電話での発信はできません。(逆も同じ)
各種加入電話サービスとの組合せによっては不都合が生じる場合があります。
この構成では2回線同時利用はできません。
次のような構成はできません。
モデム−NVの電話機ポートのドライブ能力の関係で、電話機は1台しか接続できません。
電話機ポートに回線自動切替器を接続するような構成の場合、発信すらできませんでした。
また、回線自動切替器を使用せずに電話機を2台カスケードに接続した場合でも、着信してもすぐに切断されたりします。(電話機が鳴動する前に切れる)
二ヵ所以上に電話機を配置したい場合は、コードレス子機付の電話機が必要です。
2.IP電話と加入電話を使い分ける構成・その1
電話機Aからの発信はすべて加入電話を経由します。加入電話の電話番号への着信はすべて電話機Aへとなります。
電話機Bからの発信はすべてIP電話を経由します。IP電話の電話番号への着信はすべて電話機Bへとなります。
電話機Bからは緊急ダイヤル(110,118,119等)や携帯電話へかけることはできません。
電話機Aで加入電話による通話中に、電話機BでIP電話による別の通話が可能です。
3.IP電話と加入電話を使い分ける構成・その2
電話機Aからの発信はすべて加入電話を経由します。加入電話の電話番号へ着信の場合は電話機A、電話機Bとも鳴動します。ただし、電話機Bはモデム−NVを経由するため、電話機Aよりも遅れて鳴動し始めます。
電話機Bからの発信は原則としてIP電話を経由しますが、緊急ダイヤル(110,118,119等)や携帯電話番号の場合は加入電話で発信されます。また、一般の電話番号でも最初に「0000」を付加すれば加入電話経由になります。(加入電話回線未使用時)
IP電話の電話番号への着信はすべて電話機Bへとなります。
電話機Aで加入電話による通話中に、電話機BでIP電話による別の通話が可能です。
ただし、電話機Bで加入電話による通話中は、電話機Aで加入電話による通話はできません。
電話機Aは市内発着信用、電話機Bは遠距離発着信用といったところでしょうか。(ちょっと面倒)
実際、電話機Aは深夜時間帯(23時〜翌朝8時)の市内発信用(料金の関係で)ですが、この時間帯の市内発信はほぼ皆無で、着信専用電話機になっています。
企業でのIP電話導入に関してはこちらを参照してください。
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