ブロードバンドとは

ブロードバンド(Broad Band)とは広い周波数帯域のことを指します。
発生した信号は多くの周波数成分で構成されていますが、これを相手に伝えるためには伝送路を通っていかなければなりません。
ところが、伝送路には通せる信号の周波数に限度があります。高い周波数の信号まで通せるということは、単位時間あたりに送れる情報が多いことを示し、逆に低い周波数の信号しか通せないということは、単位時間あたりに送れる情報が少ないことを示します。
すなわち、伝送路が広い周波数帯域を持つならば高速で、狭い周波数帯域しか持たないのであれば低速だと考えることができます。

伝送路と速度

伝送路の伝送可能な周波数帯域を比較すると
 平行銅線対 < 撚りをかけた銅線対 < 同軸線 < 光ファイバ
の様になります。
平行銅線は電話の屋内配線を考えればよいでしょう。撚りをかけた銅線は電話の屋外線やLANケーブルを考えて下さい。
同軸線はTVのアンテナからの線を考えて下さい。ここまでは電気信号を伝送するための伝送路ですが、光ファイバは光を通すための伝送路で、1本は髪の毛ほどの太さしかありません。電気信号を光に変換して光ファイバ中を通します。
インターネットアクセス方法 伝送路 速度上限 ブロードバンドか
モデムによる加入電話(アナログ回線) 銅線 33.6kbps ×
ISDN 銅線 64kbps ×
ADSL 銅線 数十Mbps
CATV 同軸線 数十Mbps
光ファイバ 光ファイバ 数百Mbps以上

電話線(銅線:メタルケーブル)でのインターネット

上の表を見ると、同じ銅線を使いながらアナログ回線、ISDN、ADSLでは得られる速度に違いがあることがわかります。
電話局から各家庭まではほぼ100%銅線が引かれています。(最近では途中まで光ファイバが引かれているケースもあります)
現在アナログ回線を使用していれば、当然この銅線を使って通信しています。アナログ回線をISDNに切り替えたとしましょう。
しかし、電話局から家までの線はそのまま銅線が使われます。
アナログ回線をADSL化しても同じです。
同じ銅線を使いながら得られる速度に違いがあるのは次のような理由からです。


アナログ回線は通話を目的に開発・整備が行われました。すなわち音声が持つ周波数が伝送できればよかったわけです。
人間の可聴周波数は16Hz〜20kHz程で、発声する音声の周波数はさらに限定されて200Hz〜7kHz程です。電話システムでは相手が誰で何を言っているかわかればよいことから、300Hz〜3.4kHzの周波数帯域を持つ信号を通すように設計されています。
つまり、銅線が300Hz〜3.4kHzの信号しか通せないのではなく、他の伝送系装置の設計が300Hz〜3.4kHzの信号しか通さないようになっているのです

@アナログモデム
さて、データ通信が発達してくると、既存の電話網を利用して手軽にデータ通信を利用しようとの考え方がでてきました。
PCが扱えるデジタル信号を電話網が扱えるアナログ信号に変換(及びその逆変換)して信号を伝送します。
この過程が変調・復調(Modulation・Demodulation)と呼ばれ、これを行う装置が変復調装置(Modulator・
Demodulator:モデム、MODEM)です。
この変調方式を工夫改良することで、たかだか300Hz〜3.4kHzの周波数帯域を使って、30kbps程の通信速度が得られるようになりました。
(アナログモデム規格には56kbps(下り方向)のものがありますが、純アナログ通信ではないのではずしました。)


AISDN
回線をISDNに切り替えましょう。
銅線はそのまま使いますが、交換機側の回線収容ユニットがISDN用のものとなり、加入者側ではDSUやTAを用意しなければなりません。
ISDNで銅線上を運ばれる信号は
デジタル信号になります。
ISDNの加入者宅内では2回線分の信号と制御信号を扱うため192kbpsの速度が必要ですが、加入者−交換機間は2線式の銅線のため全二重通信ができません。(全二重通信をするためには4線式:上り下り2組の線が必要)  そこで加入者−交換機間は320kbpsの速度でピンポン伝送を行い、見かけ上全二重通信をしているようにしています。


BADSL
次はADSLです。
実は銅線といえども距離が短ければ、数M〜数十Mbpsの速度が実現可能です。
その様な潜在能力を活用し、通話で使う300Hz〜3.4kHz(簡単のために0〜4kHz)よりも高い周波数帯域を使用し、アナログモデムでの通信と同様、デジタル信号をアナログ信号に変調して通信を行います。
フルレートと呼ばれる規格(G.992.1)では約1MHzまでの周波数帯域を約4kHz毎に区切り、256個のチャネルを用意し、ハーフレートと呼ばれる規格(G.992.2)では約550kHzまでの周波数帯域を約4kHz毎に区切り、128個のチャネルを用意します。
一番最初のチャネル(0〜4kHz)は通話用のチャネルで、これに影響を与えないように数チャネル分空けて、それ以上をデータ通信で使用します。個々のチャネルごとに通信すべきデータビットが割り当てられ、チャネル単位で変復調を行います。
通信条件が悪いチャネルについては、割り当てられるビット数が減らされたり、チャネル自体を使用しないよう設定されますので、状況ごとに実際に通信できる速度が変わってきてしまいます。(ベストエフォート)

1.5Mbpsのサービス(規格名G.992.2 通称G.lite)では約550kHzまでの周波数帯域を使います。
8〜12Mbpsのサービス(規格名G.992.1 通称G.dmt)では約1100kHzまでの周波数帯域を使います。1.5Mbpsのサービスに比べて使用する帯域が約2倍になっているだけですが、個々のチャネルに割り当てるビット数も増えているため5倍以上の最大速度を持ちます。
2002年夏からは12Mbpsのサービスが始まりました。12Mbpsのサービスでは8Mサービスよりも各チャネルに割り当てるビット数を増やし、中には下図のように上りの通信帯域も下りの通信に使用することで速度を向上させる方式もあります。
将来、FTTH(Fiber To The Home)が実現すれば、電話局から各家庭までの間が光ファイバとなり、光・IP通信網の利用が可能となれば真の意味でのブロードバンド化が実現します。