ADSLで常時接続

従来のアナログ回線からのモデム接続やISDN接続に比べて十倍以上高速なインターネットアクセスが可能なADSLです。

      ADSLとは     ADSLの問題点    ADSLを利用するには

ADSLとは


ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line:非対称デジタル加入者線)は従来からのアナログ回線(銅線の電話線)を使い、高速通信を可能にしています。
非対称とは上り(加入者→局)と下り(局→加入者)の速度が異なることを指しています。一般利用者がインターネットを利用する場合、下り方向のデータの流れが大半を占めているので、上りより下りの速度を大きくしています。また、ADSLと加入電話を1本の回線で共用することも可能で、インターネットはADSLで常時接続可能となります。

データ信号速度は最大で1.5M〜26MbpsとINSネット64に比べて高速ですが、
ベストエフォート型サービスといって最大速度を保証されているものではありません。局からの距離や周囲の回線状況により得られる速度が違ったり、最悪サービスが受けられない場合もあり得ます。
ADSLを利用しようとする時、現在使用中の回線がISDN回線の場合、一旦アナログ回線の契約に戻さなければなりません。
ADSLサービスは順次拡大されてはいますが、交換局がサービス対象局になっていても、利用者宅が交換局から離れていると信号の減衰が激しいためサービスを受けることができない場合もあり、全国津々浦々で平等に利用可能なものではありません。
当初は最大でも1.5Mbpsの速度で始まったADSLサービスですが、順次8M、12Mと高速化して、2003年夏には20Mを超えるサービスが登場しました。
しかし、最大速度が向上するにつれて、理論速度と実際に得られる速度との差が
大きくなり、利用者の不信感が増大していることも事実です。原理を知っている利用者ならばいざ知らず、一般の利用者にしてみれば20M超のサービスに加入し、実際の速度が4Mbps程度では騙されたと感じても無理はありません。
12Mbpsのサービスでも開通サービスの平均速度は3Mbps程度なのですから過度の期待は禁物です。
ADSL(非対称デジタル加入者線)とは言っても、アナログ通信技術の極致(ちょっとオーバー?)ではないでしょうか。
ついこの前までのアナログモデム全盛時代では、電話1回線で33.6kbps(純アナログ的に)の通信しかできませんでした。
これは下図の
赤色で示した音声帯域0〜4kHz(厳密には0.3〜3.4kHz)だけを使用して、送信側でデジタル信号をアナログ信号に変換(変調)して送出、受信側でアナログ信号からデジタル信号に変換(復調)して通信していたからです。
ところがADSLの下り(局→加入者)では上図の緑色で示した約4kHz幅の信号周波数帯域を多数使用して、デジタル信号をアナログ信号に変調して送出しています。
いわば1本の物理的な回線上に100〜200本の仮想的な回線がまとめられているようなものです。この数百本にも相当する仮想回線の変復調を1台のADSLモデムが担っているのです。1200bpsのパソコン通信に一喜一憂していたのはわずか10年程前の話。今ではその千倍以上の速度で安価に常時接続可能というのですからまさに隔世の感がします。
現在利用可能なADSLサービスは速度の観点から見て2通りあります。
フルレートと呼ばれる規格(G.992.1)に準じたものとハーフレートと呼ばれる規格(G.992.2)に準じたものです。前者では最大速度8Mbps、後者では最大速度1.5Mbpsとなっています。
8Mbpsのサービス(G.992.1 通称G.dmt)では約1100kHzまでの周波数帯域を使い、これを同じように約4kHz毎に区切り256個のチャネルを用意します。1.5Mbpsのサービス(G.992.2 通称G.lite)では約550kHzまでの周波数帯域を使い、これ約4kHz毎に区切り128個のチャネルを用意します。
赤色で示した一番最初のチャネル(0〜4kHz)は通話用のチャネルで、これに影響を与えないように数チャネル分空けて、それ以上をデータ通信で使用します。個々のチャネルごとに通信すべきデータビットが割り当てられ、チャネル単位で変復調を行います。
通信条件が悪いチャネルについては、割り当てられるビット数が減らされたり、チャネル自体を使用しないよう設定されますので、状況ごとに実際に通信できる速度が変わってきてしまいます。
8Mbpsのサービスは1.5Mbpsのサービスに比べて使用する帯域が約2倍になっているだけですが、個々のチャネルに割り当てるビット数も増えているため5倍以上の最大速度を持ちます。
話が複雑になりますが、日本のサービスで使用されている二つの規格(G.992.1とG.992.2)にはそれぞれAnnex AとAnnex Cというさらに二つの種類があります。Annex Aは米国で使用されているものであるのに対し、Annex Cは日本の通信事情に合わせて決められたものなのです。日本の通信事情とはISDNの信号とADSLの信号とが干渉するという問題です。Annex AではISDNの信号からの干渉を強く受ける恐れがあるのに対し、Annex Cではこの干渉を低く抑えるように工夫されています。ISDNがかなり普及している日本ではAnnex Cのサービスが安心できると思います。
さて、ADSLの技術も進歩して、10Mbpsや12Mbpsのサービスが登場しています。(2002年7月以降)
10Mbpsのサービスは交換局からごく近い回線条件のよいユーザのみが対象で、上図の緑色で示したチャネルに割当てるデータビットの数を増やすことで速度の向上を目指しています。
これに対して12Mbpsのサービスには大きく分けて二通りあります。
一つは従来通りの138kHz〜1104kHzを下り通信帯域として、エラー訂正方式等に改良を加えチャネルに割当てるビット数を増やそうというものです。(NTT、イー・アクセス)
もう一つは、下図に示すように従来は上り専用であった通信帯域を下りの通信帯域としても使用してしまうというものです。上りの通信帯域は低い周波数帯域であるため距離による信号減衰の度合いが小さいので、遠距離の場合でも確実に速度向上につながります。さらに制御信号の周波数に幅を持たせて安定化を図っています。これらによって8Mbpsのサービスでは対応できなかった距離でのADSLサービスが期待できるようです。(アッカ・ネットワークス、Yahoo!BB)
さらに2003年7月からは、使用する周波数帯域を今までの2倍に拡大した規格(Annex I等)を使用した最大速度が20Mbpsを超えるサービスが登場しました。
NTT東西やイー・アクセスでは最大速度24Mbps、アッカ・ネットワークスやYahoo!BBでは最大速度26Mbpsを謳っています。高い周波数帯域を使用する分、高い速度を得るには従来よりもさらに条件が厳しく、局からの配線距離2km以内、伝送損失25db以内でないと12Mサービスよりも高い速度にはならないようです。

NTTはもともとADSLの推進に積極的ではなかったのですが、フレッツ・ADSLのサービス開始とともに姿勢を転換したようです。インターネットによってようやく日の目を見たINSネット64の普及にとって、速度的にはINSネット64の数倍から二十数倍以上というADSLは悪影響を及ぼしかねないという不安があるのかも知れません。民間企業のサービス開始や監督官庁からの指導もあり、ブロードバンド(広帯域=高速)時代の夜明けにつながったようです。
NTTが目指しているのはFTTH(Fiber To The Home)によるB−ISDN(B:Broad band=広帯域)です。各家庭まで光ファイバを引き込めば超高速のインターネット接続が実現できます。ADSLはそれまでの”
つなぎ”という位置づけですが、少しでも早くという利用者の欲求を、さしものNTTも無視できない状況です。

アメリカ合衆国や韓国では高速インターネットアクセス可能なADSLが着実に普及しているようです。
わが国でもADSLや光ファイバを利用したインターネットアクセスが急速に増えています。ADSLに限れば他国に比べ最も低コストで利用できるようになったそうです。

もともとADSLに乗り気ではなかったNTTですが、このところ下記のようにいろいろなサービスを展開し積極的に取り組んでいるようです。
  フレッツ・オフィス
  フレッツ・グループアクセス
  フレッツ・オンデマンド
  複数セッション同時接続


ADSLの問題点 (詳しくは こちら をご覧下さい)

ADSLはベストエフォート型のサービスです。
ベストエフォート型とは「事業者としては努力するが一定水準のサービス提供を保証するものではない」というものです。
1.5Mのサービスを利用しても得られる実効速度は1.3Mbps程度が上限です。(通信プロトコルのオーバーヘッドによって)
もともと音声での通話を前提に構築された電話網を流用して本来の信号周波数を大きく超える高周波信号を伝送するため、回線の状態や交換局からの距離、宅内の配線状態等によって状況が大きく左右されるという問題点があります。
隣家で良好な通信状況だからといって、自分のところも同じ状態になる保証はまったくありません。

距離の問題
交換局から直線距離ではなく実際に電話線が通っている距離が関わってきます。高周波信号になるほど伝わる距離による減衰の度合いが大きくなりますので、交換局に近ければ最大速度に近い速度が得られ、遠ければアナログモデム並みの速度しか得られなかったり、最悪通信できない場合もあります。
回線の状態の問題
ADSLは伝送路上の近くの線にISDNがあると、これの干渉により通信速度が上がらない場合があります。詳しくは こちら をご覧ください。
また、伝送路上に手ひねり配線(線を接続するのにハンダ付けでなく手でより合わせて接続)やブリッジタップ(途中に使われていない枝線が分岐している)があると速度の阻害要因になります。
また各戸に引き込んだところの保安器の機種によっても接続が不安定になることもあります。
さらにはラジオのAM放送とほぼ同じ周波数帯域ということで、近くにAM放送の送信所などがある場合、この影響を受け速度があがらない場合もあり得ます。

宅内の配線の問題
宅内で配線がいくつにも分岐していたり、壁のモジュラジャックからスプリッタ・ADSLモデムまで、モジュラケーブルを長々と引き伸ばししていると、雑音の影響を受けやすくなります。また、ADSLモデムの電源をたこ足配線状態の電源タップから取っていると、他の電化製品からの雑音の影響を電源ラインから受けてしまいます。ADSLモデムにアース端子がある場合にはアース配線をした方がよいようです。
ADSLを電話やISDNのように誰でもが公平に受けられる(うまくいって当たり前な)サービスと捉えてはいけません。逆にうまくいったら儲けものと考えたほうがよいでしょう。
上記のようにいろいろな要因が複合する可能性があり、実際にやってみないとわからないというのが正直なところです。
私のお客様の中でもいろいろな状況がありますが、ISDNを何回線か使用しつつのADSLでもほぼ最大速度に近い速度が得られていたり、逆に電話局から1kmもないのに回線損失が大きかったりと千差万別です。

実際私の家でもフレッツ・ADSLモア(12M)を利用していますが、最初の1.5Mの時の申し込みに際しNTTからは状態がよくないから考え直したほうがよいとの”指導”がありました。地理的条件等を考えてもよい条件ではなかったのですが、ISDNの10倍(6〜700kbps)も出れば大成功と考え無理やり申込みました。(当然悪くても文句はいわないからと) 
当初4〜800kbpsと不安定でしたが、宅内の問題を段階的につぶしていくことで1Mbpsで安定してサービスが受けられるようになりました。さらに、数ヵ月後にあったNTT側のメンテナンス工事の後には最大速度(1.3Mbps)で接続できるようになりました。
その後12Mサービスに切り替えたところ2.5Mbps程度の速度が得られるようになり、さらにIP電話導入に伴いレンタルモデムを更新したところ、最大速度は3Mbpsを下回らないようになりました。今後周囲の状況変化により速度・安定性が低下する懸念もありますので祈るような気持ちでいます。
例:自宅で対処した問題
壁コンセント−スプリッタ・ADSLモデム間を5mの線→1mの線に短縮
ADSLモデムの電源はたこ足配線とならないよう配慮
ADSLモデムを他の機器から離す
ADSLモデムのアース端子を商用電源コンセントのアース端子に接続(私のところではこれが一番効果あり)


ADSLを利用するには

ADSL回線の提供を行っている事業者の代表的なところをリストアップしてみます。
インターネットに接続するためには、これらとプロバイダとの関係を把握しておく必要がありますので、下表と下図を参考にして下さい。
ADSL事業者 サービス名称 供 用 形 態 備     考
NTT東・西 フレッツ・ADSL @ 回線提供のみ 別途フレッツ・ADSLに対応したプロバイダと契約する
平成電電 電光石火 @ 回線提供のみ(1年間はプロバイダ料金無料でBの形態も可) 別途電光石火に対応したプロバイダと契約する
アッカ・ネットワークス    A 提携プロバイダを経由した回線提供 これに対応したプロバイダを介した契約で、プロバイダとのみ契約すればよい
イー・アクセス   A 提携プロバイダを経由した回線提供 これに対応したプロバイダを介した契約で、プロバイダとのみ契約すればよい
Yahoo!JAPAN Yahoo!BB B プロバイダを兼ねた回線提供 プロバイダの新規契約・乗り換えになる
申し込みと料金の支払い
ADSLは人口カバー率という数字の上でこそ全国的に普及しそうに見えますが、その特性上、人口カバー率内にカウントされていてもサービスの提供が受けられない場合や満足のできるサービス状態にならない場合が多々あります。上記ADSL事業者のHPで利用者の電話番号からサービスの可否が判定できますが、このような状況も念頭においてください。
一つの事業者がサービス提供可能であるからといって、他の全ての事業者もOKとは限りませんので注意が必要です。

既にプロバイダを利用中で現在のメールアドレスやホームページのURLを変えたくないなら、そのプロバイダのサービス内容を調べて、@かAの形態が現実的です。
Aでは窓口をプロバイダに一本化できるので手間が省けますが、提携プロバイダは限定されます。
もちろんBでも構いませんが、プロバイダの乗り換えとなるためメールアドレス等の変更を覚悟して下さい。
@の場合複数のプロバイダを切り替えて利用することができます。

新規にプロバイダに加入するのであれば、A、Bあたりが現実的です。Aの形態はプロバイダを決めてそのサービスコースの中からアッカ、イーアクセスを選びます。